別れ道 「ホテルステラマリス」より


どうして変わってしまうのかしら…

考えても仕方がないことをまた考えてしまう自分を笑うことは今はできなかった。
そうして私はまた彼との思い出の中に一人でさまよう。
そこには確にステータスを求める気持や自分勝手な欲があったのだろう…

けれど決してそれだけではない想いがあった。

触れていたはずなのに…
手の中にあったはずなのに…

気が付けば失くしていた。私だけ何も知らないうちに変わっていた。
彼は何を持っていたのかわからなくなったと私に言ったけれど、
それでは私は一体、何を失ってしまったんだろか?

今日、彼が来ると聞いても動揺しなかったのはきっとまだ私がそんな想いに囚われているからなのだろう。
それでも私は彼を恨んだりしない…いえそれは違う、しないのではなくできない。
彼が本当の最後に選んだものこそ彼に最もふさわしいのだと素直に思っていたから。

少し前の私からは到底そんなことは思いもしなかった。


ふと目をあげると廊下の先に彼の姿が見えた。
あの時の別れから何も変わってないように感じる一方で確に何かが彼を変えていた。
それを見てやはり彼の選択が間違っていなかったことに思い知らされる。

彼が廊下の半分近くまで来た時、やっとこちらに気が付く。
彼は少し驚いた顔をしたけれど以前と変わらない態度でやって来てくれた。

そんなとこが憎めないのね…

私は思わず心の中で呟く。


「やあ…アリソン。元気?」

彼のありきたりな挨拶の中にほんの僅か気遣わしげな感情があるのに気付くけれど私はわざと明るい笑みを浮かべて答える。

「ええ、勿論よ。ウィル、貴方は?」

「見ての通り元気でやってるよ。でもよかった…思ったより元気そうで…」

「あら心配してくれたの?」

「そりゃ…あ、いや…」

彼は今度こそ気まずそうに目をそらす。私はそっとため息をつくと彼に言った。

「気にしないで…そんなつもりじゃないから本当に。」

「あ、ああ…うん、解ってる。」

やっぱり彼は変わった、でも以前からこうだった気もするのは恋人と呼べた頃の彼をよく覚えていないからかもしれない。

あんなに近くにいたはずなのに…

胸が少し苦しくなる。


「それで?ホテルの方は順調なの?」

それを何より私が認めたくなくて話題を変える。

「ああ、それは何とか今は上手くいってる。」

「そう…それはよかったわね。」

あのホテルのことは彼に聞かなくても知っていた、あれだけメディアが取りあげていたら嫌でも耳に入ってくる。 それでも彼の口からそれを聞いて少しほっとした自分を知る。
だから私が私の思いから抜け出すために、前に進むために彼に問う。

「ウィル、答えて。貴方は今、幸せ?」

彼は意を突かれたのか一瞬の沈黙の後、答えた。

「ああ…心から…」

そう告げた彼の笑顔がもう私の知らない世界の彼だと教えてくれた。

「随分はっきり答えるのね…元婚約者に気遣ってはくれないの?」

これはただのちょっとした意地悪に過ぎなかったけれど彼は真面目な口調で静かに問い返した。

「それで君は救われる?アリソン」

私はしばらく黙り込んでからはっきり答える。

「いいえ、無理ね。」

そう、裏のない優しさは時に心を傷付けるだけだから、
彼のその答えこそ私が一番聞きたかったから。

「ねぇウィル、今すぐはまだ無理だけど私いずれは貴方よりいい男を見付けるわ。」

彼を見据えながら私は心からの笑みを浮かべて宣言する。

「そしたら貴方のホテルに招待してくれる?」

彼はそれを聞くと微笑み返して答えてくれる。

「勿論、喜んで…あ、ただし俺の…じゃなくて俺達のホテルに。」



彼との再びの別れはとても気持の良いものだった。
けれどなお心の奥にある愛しくもせつない気持をありったけ込めて、 もう届かない彼の背中に向かって囁いた。



「愛しているわ。さようなら私のウィル…」



−終−





□後書き
単純明快な妄想。ある意味、純粋なサイドストーリーですか。
つうか飛龍さんタカハナ好きすぎてネタにできないんだな、単純に(痛)
そしてかなみんのアリソンがかなりツボってたんだな(ネタにできるほどな)

ま、そんな単純なものの積み重ねの一部です。(一部?)(でももうネタはない/爆)

たぶん飛龍さんにとって宙組観劇してる時が1番、純粋な宝塚ファンしてる時
なんじゃないかとこの頃、ふと思ってみたりしてます。

携帯サイトからの移行作品その1(てことで他にも移行させます)