心 「イーハトーヴ夢」より
ほんの少し前までは皆でよく遊んでいたんだ。
まだ俺達が今ほど世の中というものを知らなかったあの頃。
そこには皆が一緒にいた。
俺もジョバンニもカンパネルラも…
いつからだったんだろう?
どうして解らなかったんだろう?
ジョバンニが俺たちと遊ばなくなった。
働かなくてはいけないから。
それは知ってはいたけれど、よく理解はできていなかった。
俺は遊べなくなったことよりも、あいつを遠くに感じたことに酷く苛ついた。
いつも一緒に駆け回って、遊んで、騒いでいたのに。
働いている、それだけであいつは俺たちとは一緒ではなくなったかのようで。
それは何だか酷く心を落ち着かなくさせた。
だから、からかったりして構わずにはいられなかったんだ。
俺にはその気持ちにどうすればいいのか、わからなかったから。
カンパネルラだけ知っていたんだ。
ジョバンニの1番側にいたカンパネルラだけは解っていた。
賢くて優しいカンパネルラ…
忘れる事はない。今でもはっきりと目に耳に焼き付いている。
優しい笑顔も、一緒に大笑いした声も、ジョバンニをからかって睨まれた目も…
あの運河でのただ哀しそうな瞳の色も、悲痛な叫び声も。
誰よりも近く一緒にいたカンパネルラとジョバンニ。
俺は羨ましかった。あの中に少し前までは俺も一緒にいたのに…
だけど…だからといって、あんなことを決して望んだんじゃない。
失うことを、悲しませることを、したかったんじゃない。
カンパネルラがいなくなった、あの星祭の夜。
その事実だけがずっと信じられなくて、何でもないかのように振舞った。
ただ一緒にいた仲間たちからのどうしようもなく責めて突き刺さる視線に…
俺はただ違うとしか叫べなかった。他にどうしよもなかったから。
違うッ!俺は悪くないッ!
けれど心の何処かで知っていた。
違う。俺の所為だ。
心の奥から黒いもやもやしたものだけが広がる。
それは振り払おうとすればするほど段々と深く更に広がる。
足掻けば足掻くほどそれは俺の心を支配するかのように。
それは泣きたくなるほど怖かった。怖くて怖くて仕方がなかった。
ふいに優しい温もりが触れられた。
それはその時に1番望んでいたもので、その時に1番、望めないはずのもの。
けれど咄嗟に縋り付いていた、心の底に生まれた恐怖から。
そして次にその温もりをくれたのが誰だか知る。一瞬、信じられなかった。
ジョバンニ…
その時のジョバンニの瞳は涙で濡れていたけれど悲しみの色はもうなかった。
驚いたけれど、いつしかそれは至極当然のことだと思えてきた。
ジョバンニは誰より側にいたカンパネルラがいなくなったことを受け入れていた。
誰よりも側にいたジョバンニだから、それができたのかもしれないと。
だからカンパネルラが居たことを、生きていたことを皆に教えて証明した。
それは皆の悲しみを和らげ、癒した。
何よりも俺の心の黒いもやもやを吹き払ってくれた。
あんなにも恐怖に怯えていた俺の心を癒してくれた。
けれど俺は忘れる事はしない。
あの時、感じた恐怖も、悲しみも、癒してくれたジョバンニの優しさも。
カンパネルラが生きていたことも。
あの夜、あの時、感じた心を俺は忘れはしない。
―終―
□後書き
ザネリ視点。…何が書きたかったんだろうコレ?(え…ちょっと?)
確かまだ続きがあるとかないとかゆー噂です(もしもし?)
や、前サイトで出しそびれたブツだったり…。
その後のザネリとジョバンニを書きたいだけだったり…
ええ、あくまでピュアに生きていきますイーハでは(笑)